直接労務費の賃率と製造間接費の配賦率

本記事のポイント

直接労務費は「1時間あたりいくら」というように時間(工数=能率)に比例して按分するのが適当であり、製造間接費である建屋の減価償却費は「1個あたりいくら」というように、生産数量で按分するしかなく、直接労務費と製造間接費とでは、品目按分するための基準が異なるため、按分比率も賃率と配賦率というように区別されます。

実際原価の場合は、当月の製造間接費実際発生額や実績数量をベースとして実際配賦率が算出されるのに対して、標準原価の場合は、製造間接費予算と予定数量をベースとして予定配賦率(標準配賦率)が算出されます。

  • 労務費金額(実際発生額または予算)÷作業時間=賃率
  • 製造間接費金額(実際発生額または予算)÷数量=配賦率

製造間接費の実際配賦率と予定配賦率(標準配賦率)

原価計算の種類にもいろいろありますが、大きく分けると実際原価と標準原価の2つに集約され、実績原価や予算原価なども標準原価の一種であると考えることができます。
costing
固定費は大きく分けて直接労務費と製造間接費がありますが、直接労務費原価は賃率で、製造間接費原価は配賦率を算出することからはじまります。

直接労務費は「1時間あたりいくら」というように時間(工数=能率)に比例して按分するのが適当であり、品目ごとに標準工数が異なる以上、生産数量按分するのは適切ではありません。

一方で製造間接費である建屋の減価償却費は「1個あたりいくら」というように、生産数量で按分するしかなく、労務費のように工数で按分できるものではありません。

このように同じ固定費でも直接労務費と製造間接費とでは、品目按分するための基準が異なるため、按分比率も賃率と配賦率というように区別されます。

StandardCost実際原価の場合は、当月の製造間接費実際発生額や実績数量をベースとして実際配賦率が算出されるのに対して、標準原価の場合は、製造間接費予算と予定数量をベースとして予定配賦率(標準配賦率)が算出されます。

実際配賦率や予定配賦率は当月の標準原価配賦率としてコピーされ、「製造間接費=予算費用x配賦率」で品目あたりの製造間接費単価が計算されます。

  • 実際原価単価
    1. 直接材料費:総平均単価
    2. 直接労務費:実際発生額から算出した実際賃率x直接工数
    3. 減価償却費:実際発生額から算出した減価償却費賃率x直接稼動時間
    4. 製造間接費:実際発生額から算出した配賦率x発生費用
  • 標準原価単価
    1. 直接材料費:標準単価(購買単価マスタから)
    2. 直接労務費:標準賃率x標準工数(能率)
    3. 減価償却費:標準減価償却費賃率x標準稼動時間(能率)
    4. 製造間接費:標準配賦率x予算

LaborCost

原価管理システムの実際原価では、固定費はコストセンター集計後の発生費用を作業時間や製造数量で按分して算出しますが、この際の按分比率が賃率や配賦率であり、原価管理システム内では「賃率x工数」で労務費単価を、「配賦率x費用」で製造間接費単価を計算しています。

標準原価は該当月の実績入力の完了を待たずして計算でき、四半期や半期の予算を計算するために使用されます。

標準原価計算の手順

標準原価は生産管理のマスタで管理されている購買品の購買単価を直接材料費の標準購入単価とし、前月の実際原価計算で算出された実際配賦率や、製品の生産予定数を展開計算した結果や標準能率(工数)から算出された予定配賦率を固定費の標準配賦率として計算されます。

  1. 製品の生産予定数からBOMに基づき展開計算
    • 仕掛品の予定生産数
      予定生産数と標準能率に基づき時間展開計算

      • 製品と仕掛品の予定直接作業時間
    • 購入品の予定購入数
  2. 一次配賦比率を予定生産数または予定直接作業時間に基づき自動計算
  3. 一次配賦比率に基づき一次配賦計算しコストセンター別に固定費を集約
  4. 配賦率と賃率の計算結果を標準原価配賦率として設定
  5. 直接材料費の標準単価と標準原価配賦率に基づき標準原価計算

配賦率の計算方法

配賦率とは、勘定科目や部門単位の予算費用や実際発生費用を、作業時間や製造数量で品目単位に按分した結果として算出される比率のことであり、直接労務費を作業時間で割ると賃率と呼ばれます。

  • 配賦率計算
    1. 労務費金額(実際発生額または予算)÷作業時間=賃率
      ⇒賃率x能率(工数)=労務費
    2. 製造間接費金額(実際発生額または予算)÷数量=配賦率
      ⇒配賦率x費用=製造間接費

言い換えれば、配賦率に費用を掛けると品目別の原価費目単位のコストが計算できますが、それが予算をベースにしていれば標準原価、実際発生額をベースにしていれば実際原価になります。

但し賃率には費用ではなく能率(工数)を掛けます。

直接材料費は実際原価では総平均単価、標準原価では標準単価をベースに計算されますが、固定費(直接労務費と製造間接費)は実際発生額であれ予定発生額であれ、一次配賦(部門間配賦や製品グループ間配賦)でコストセンターに集計されてから、作業時間や製造数で割ることで、最終的に品目1個あたりの費用となります。

製造数といってもKGのものやPCSのものがコストセンター内で混在する場合、例えば1個あたり8KGとか1パックあたり12個とかの場合、8や12という係数で重み付けして、配賦対象の単位を揃える必要があります。

標準原価計算では、直接材料費の標準単価は購買単価マスタの単価であり、直接労務費は賃率x能率(工数)であり、製造間接費の配賦率は標準原価配賦率x予算になります。

このように標準原価計算では、前期までの実績に基づいてあらかじめ算出された賃率と配賦率に基づき、当期の予算を品目按分した標準固定費を、直接材料費の標準単価に積上計算しています。
StandardCost