タックスアムネスティ(租税特赦法)が及ぼす普通のインドネシア人への影響

2016年7月から施行されているタックスアムネスティ(Amnesti Pajak)といえば「脱税への恩赦」とか「海外の隠し資産の国内への呼び戻し」とか、犯罪者の香りがする説明が先行してしまいがちですが、NPWP(納税者番号)を持つすべてのインドネシア人が当事者となる問題です。

所得税申告に財産リストを申告する必要がある理由は、所得に不相応な財産を持っているかどうかをチェックするためであり、一般企業の財務状態はP/LだけでなくB/Sもチェックする必要があることからも理解できます。

タックスアムネスティが国会で可決された経緯

6月28日にタックスアムネスティがDPR(国会)で電光石火の速さで可決されたのは、5月に世界的に話題になったパナマ文書(パナマの法律事務所から流出したタックスヘイブンに関する内部文書)に載っていたインドネシアの個人・法人の資産総額は2,300兆ルピア(国家予算の1.5倍)から、天文学的な税収が見込まれることに加えて、この法律によって資産の海外流出を防ぐという意味があるからです。

要はPPh(所得税)未納分や国内資産のうちまだPBB(Pajak Bumi dan Bangunan)固定資産税を納めていない分があれば、3ヶ月以内に白状すれば2%、6ヶ月以内なら3%、9ヶ月以内なら5%の罰金で無罪放免、海外資産の場合は、3ヶ月以内なら4%、6ヶ月以内なら6%、9ヶ月以内なら10%でOK、というものです。

このAmnesty(ギリシア語で「忘れ去る」の意味)という甘い響きの言葉の裏には、期間を過ぎたら大変な罰金を課しますよ、という脅し文句が隠されているわけで、金持ちインドネシア人の海外資産の代表として挙げられるシンガポールの高級コンドミニアムなんかは、今のうち全部ゲロしておかないと、後で発覚したらとんでもない罰金(具体的な税率は2016年8月現在まだ流動的)を課せられます。

そして当然ながらこの問題、金持ちインドネシア人だけではなく、普通のインドネシア人庶民、在住外国人も当事者となります。

SPT tahunan PPh(所得税申告)に記載する内容

毎年3月末になると、弊社スタッフも半休とって税務署に所得税の申告に行きますが、今はDJP Onlineにログインしてe-Filingのメニューから申告ができるようになっています。

民間企業は、従業員の所得税PPh21を納税済みである証拠であるbukti potong pajakを発行してあげる義務があるので、もしこれをもらえない場合は、会社が税務署に従業員の存在を報告をしておらず、納税していない可能性があります。

SPT tahunan PPhのための専用フォームは3種類に分かれていて

  1. 1770S : penghasilan bruto(グロスインカム)が60juta以上の一般的なサラリーマン
  2. 1770SS : penghasilan brutoが60juta以下の人用(専業主婦など)
  3. 1770 : Pengusaha/wiraswasta(起業家)用

このうちe-Filingは1770Sと1770SSフォームの人が対象となっており、記載するために必要な書類は以下のようなものです。

  1. bukti potong 1721 A1(民間企業従業員)または A2(公務員)
  2. bukti potong 1721 VII(個人所得税PPh21)源泉分離課税分(Final)
  3. bukti potong(土地や建物以外の賃貸から発生したPPh 23)
  4. bukti potong PPh 4-2(土地や建物の賃貸収入、または配当から発生したPPh 4-2)
  5. 財産リスト(預金、土地権利書、車のSTNK)
  6. 借金リスト
  7. Kartu keluarga(家族証明書)

税金と資産の関係

今回問題となるのが「5.財産リスト(預金、土地権利書、車のSTNK)」であり、そもそも自分の財産を好んで税務署に申告しようとは思わないのが一般的な庶民感覚だと思われますので、ここがいい加減な申請(過少申請)になっている人が大半であることが推測されます。

そもそもなんで所得税申告に財産リストを申告する必要があるかといえば、所得に不相応な財産を持っているかどうかをチェックするためであり、一般企業の財務状態はP/LだけでなくB/Sもチェックする必要があることからも理解できます。

今回のタックスアムネスティで、一般のインドネシア人があせっているのが、このいい加減な過少申請が罰金の対象となりうるというところですが、SPT tahunan PPhに資産の申告漏れがあったとしても、その資産にかかわる税金を納めていれば、SPT tahunan PPhの修正のみでよく、別途罰金や税金がかかることはないようです。

例えば家やアパートなどの不動産の場合、毎年税務署から送られてくるPBB(Pajak Bumi dan Bangunan)を分離課税(Final tax)として支払っているでしょうし、銀行預金の利子も自動的に20%源泉されています。

SPT tahunan PPhはNPWPを持つ人すべてが対象なので、専業主婦であるうちの嫁さんも対象であり、しかもここ2年ほど申請をサボっている非常に危険な状態なので、今回のタックスアムネスティを機に税金の問題を全部クリアにすることにしました。

今、8月に引っ越してきたばかりのアパートのテラスでこれを書いているのですが、この地区を管轄するKantor Pelayanan Pajak(税務署の出張所)が、テラスの真下に見えているところです。