インドネシアでは決済が制限されている暗号通貨(仮想通貨)の現状

2017/09/09

早朝のスディルマン通り

インドネシアの場合、ビットコインは決済手段と注目されているというより、アルトコインと交換しながらビットコインで利益確定するための金融商品として意味合いが強いと思います。

中国政府がICO禁止措置というニュースの衝撃

昨日2017年9月8日、中国でICO(Initial Coin Offering 新規仮想通貨公開)禁止という衝撃のニュースがTwitterやFacebookなどSNS界隈で賑わっています。

企業が株式市場を通さずにトークン(自社発行のビットコインのような暗号通貨)を発行して投資家から主にイーサリアム(ビットコイン以外の仮想通貨であるアルトコインの一つで、その他有名どころにリップルXRPがある)を集める融資活動ですが、よっぽど信頼できる会社が発行するトークンだとしても、かなりのハイリスクであることは間違いありません。

集めるだけ集めて何の商品も開発せずトークンの使い道がなくなったり、本来の自由な資金調達を可能にするというメリットを打ち消すほどの、投機バブルというデメリットを引き起こすなど、あの中国共産党をもってして「金融詐欺、ネズミ講」と言わせるくらいのものですから、中国人の商魂がどれだけ凄いかが判ります。

インドネシアでの暗号通貨(仮想通貨)の使い方

インドネシアの場合、ビットコインは決済手段と注目されているというより、アルトコインと交換しながらビットコインで利益確定するための金融商品として意味合いが強いと思います。

よく「インドネシアの暗号通貨市場が熱い」という日本の記事を見かけますが、体感として一般の人々の間でのビットコインへの関心がそれほど高いとは思えず、2017年9月現在まで有名どころのTokopediaやlazadaなどの主要オンラインモールでビットコイン決済に対応しているショップは見つかりませんでした。

オフラインの実店舗はどうかといえば、DIRECTORY BITCOINで「カフェ・レストラン」というくくりで見ると現在登録されているのは24件のみです。

取引所ごとのビットコインの販売価格差

自分の場合、日本の大手取引所CoincheckとインドネシアのBitcoin.co.idに口座を持っていますが、円換算するとBitcoin.co.idのほうが割高になります。

取引所ごとのビットコインの販売価格差

9月9日9:50時点でのBitcoin.co.idのBTCのルピア建て販売価格

ちょうど今現在のCoincheckの販売価格は1BTC=462,937円で、Bitcoin.co.idが1BTC=Rp.57,929,000ですから、ヤフーファイナンスのレート1円=121.972928で換算しても、1万円以上の差があります。

ということは日本で購入したビットコインを使ってインドネシアのショップで決済すればお得な感じもしますが、インドネシアでビットコイン決済可能なオンライン・オフラインショップは現在のところ非常に少なく、あっても商品価格が相対的に日本より割高に設定されているハイクラスのカフェやショップのみです。

決済でメリットがなければ金融取引としてはどうかと言えば、為替手数料(exchange fee)や送金費用(remittance expense)、為替リスク(foreign exchange risk)を考慮すると、このスプレッド(spread)を利用してbitcoin.co.idなどのインドネシアの取引所でBTCを売却する際にどれだけ優位に働くかは微妙なところです。

追記

そもそも2017年9月現在インドネシア政府がビットコイン決済を禁止しているようで、インドネシア国内でビットコイン決済可を表明しているショップやカフェでも、ビットコインからルピアに換算して行われ、会計帳簿上も機能通貨としてのルピア取引として記帳されていると思われます。

仮想通貨取引での確定利益に対する課税

日本の国税庁から仮想通貨売買で生じる利益についての税務上の課税方針が公表されています。

雑所得ということは総合課税対象に含まれるわけで、最大で所得税率50%がまともにかかる可能性があり、多くの仮想通貨プレイヤーを失望させたようですが、インドネシアの場合、仮想通貨はあくまでもモノの売買と同じく、付加価値税VAT11%(PPN=Pajak Pertambahan Nilai)対象であることは確定しています。

  • https://help.bitcoin.co.id/apakah-perdagangan-bitcoin-di-bitcoin-co-id-dikenakan-pajak/

個人がビットコインBTCをルピア建てで購入する場合、主に2通りあります。

  • 販売所から購入:販売所が個人にBTCをルピア建てで販売
  • 取引所から購入:個人間でBTCの売買を行う。

つまり消費者目線で見た場合、ルピアをBTCに両替する際にPPN-Inが11%かかり、逆に販売所は消費者に対してマージンを乗せてBTCの売却時にPPN-Outの11%を乗せ、この場合販売所が納税します。

個人的には、将来インドネシアで仮想通貨取引に際しての確定利益に対しては総合課税(PPh Non-Final Tax)ではなく、株式売買によるキャピタルゲインや定期預金の利子にかかる分離課税(Final)であるPPh4(2)の20%が課せられるものと勝手に予測しております。

販売所からルピアでビットコインを買う、ビットコインでルピアを買う場合の会計仕訳(推測です)

現在のところ、インドネシアでのBTC取引の際に発生する税金は、販売所との間で発生するルピアとBTCの交換時に発生するPPN11%のみであり、取引所での仮想通貨間売買によって生じるBTC建てのキャピタルゲインに対しては課税されません。

仮想通貨取引に関わる会計処理方法は、2017年9月現在の日本でも確立されておらず、ましてやインドネシアの話ですから、以下は間違っている可能性大ですが、半分洒落で書いてみます。

なお上で予測したばかりの、キャピタルゲインに対する源泉所得税PPh4(2)は省略しています。

  1. 消費者がBTCを購入時の、消費者側と販売所側での仕訳
    • 消費者が販売所からBTCをRp.1,000分購入
      Dr. 仮想通貨 1,000    Cr. ルピア預金 1,155
      Dr. コミッション(費用)50
      Dr. PPN-In(VAT10%) 105
    • 交換所がBTCを消費者にRp.1,000分販売
      Dr. ルピア預金 1,155    Cr. 仮想通貨 Rp.1,000
                    Cr. コミッション(収益) 50
                    Cr. PPN-Out(VAT10%)105
  2. 消費者がルピアで利益確定時の、消費者側と販売所側での仕訳
    • 販売所でBTCをルピアで利益確定(BTCでルピアを購入)
      Dr. ルピア預金 1,450    Cr. 仮想通貨 1,500
      Dr. コミッション(費用)50
    • 販売所がルピアを消費者にビットコインRp.1,500分販売
      Dr. 仮想通貨 1,500    Cr.ルピア預金 1,295
                   Cr. コミッション(収益) 50
                   Cr. PPN-Out(VAT10%)155

*2022年よりインドネシアのVATは11%になりました。

ビットコインでアルトコインを購入する場合(またはその逆)の会計仕訳(推測です)

2017年9月現在インドネシアではビットコインによる決済は認められていませんが、税法上は法定通貨ルピアや外貨を除いてはすべて資産(モノ)として取り扱われるため、ビットコインでアルトコインを購入するといった仮想通貨同士の売買に関する会計仕訳は物々交換、バーター取引の仕訳に近いのではないかと推測されます。

また仮想通貨間の取引で発生するバーター差益に対しては当面課税されることはないのではないかと考えております。

  • 取引所でアルトコインでBTCを購入した場合の会計仕訳
    Dr.仮想通貨 1,500    Cr. 仮想通貨 1,200
                 Cr. バーター差益 300