実績ベースの原価計算より予測ベース所要量展開が難しい理由

予測ベースの所要量展開と実績ベースの実際原価計算

MRP「翌月内示に必要な材料の正味従属需要」を計算するためには、月末時点の製品と材料の「予測在庫」を引当た上での需要を計算する必要がありますが、生産管理システムのMRP機能を使って月中時点に「予測される月末在庫を考慮した上で翌月内示に必要な正味従属需要を算出」するには以下の手順が必要です。

  1. 翌月内示と現在から月末までのオーダ(独立需要)を準備
  2. 現在の製品在庫を差し引いた独立需要を元にMRPを回し従属需要を計算。
  3. 現在の材料在庫と材料発注残を差し引いた従属需要を計算。
  4. 従属需要のうち翌月内示に紐付いている正味従属需要を分離する。

つまり「MRPで翌月内示の正味従属需要を計算する」ということは

  1. 現在から月末までのオーダ
  2. 現在の製品と材料の在庫

という2つの情報を元に月末在庫を予測しているのと同じことであり、月中現在の在庫のみを引き当てて内示に必要な需要を計算したところで、月中から当月末までの受払を考慮していない意味のない数字が出ることになります。

  1. 現在製品在庫+残当月製品生産(予定)-残当月製品オーダ=月末製品在庫
  2. 現在材料在庫+残当月材料入荷(予定)-残当月材料投入(予定)=月末材料在庫

残当月製品生産(予定)と残当月材料入荷(予定)と残当月材料投入(予定)という「3つの予定」は所要量展開の結果としてシステムが自動生成しますが、以下の2つの条件の元では「残当月製品オーダ=残当月製品生産(予定)」と「残当月材料入荷(予定)=残当月材料投入(予定)」が成立します。

  1. リードタイム0日(今日のオーダに必要な材料は今日投入される)
  2. 出荷ロットサイズと製造ロットサイズは1対1(ロットまとめなし)

これが実績ベースの実際原価計算であれば、月末在庫は決まっているので「今月末在庫金額を押さえて当月投入実績金額を計算する」ことが可能ですが、所要量展開は予測ベースであるために「今月末在庫数量を押さえて当月投入予定数量を計算する」ことはできず、「当月投入予定数量を計算することで今月末在庫数量を計算する」ことになります。

これは実績ベースの原価計算において「総平均単価x投入実績=発生材料費」を計算し、

月初在庫金額+当月購入金額-発生材料費=月末在庫金額

を算出することと同じ考え方です。

ロットまとめとリードタイムが所要量展開を難しくする

「リードタイム0日、ロットまとめなし」という条件では、残当月製品オーダを元に残当月材料投入(予定)をBOMの必要量に基づいて自動計算できますが、現実には製造ロットまとめがあるため「残当月製品オーダ=残当月製品生産(予定)」は成立せず、購買ロットまとめがあるため「残当月材料入荷(予定)=残当月材料投入(予定)」も成立しません。

MRPまた製造リードタイムがあるため、翌月内示に必要な材料従属需要を計算するために引当てるべき在庫は「月末日-リードタイム日数」時点の在庫になります。

実績ベースである原価計算では三分法と総平均法のどちらでも発生材料費(仕掛品製造原価の材料費部分)が計算できるということは「今月末在庫を押さえて当月投入実績を計算する」ことも「材料発生費用を押さえて月末在庫を計算」することもできるということであり、予測ベースの所要量展開では「今月末在庫を押さえて当月投入予定を計算する」ことができない上に、さらに残当月材料投入(予定)を計算するにあたっても、ロットまとめとリードタイムが正確な翌月内示のための正味従属需要の算出を難しくしています。

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