時間基準の稼働率とストローク基準の負荷率

本記事のポイント

負荷率は機械の供給能力に対する需要の割合であり、プレス加工でいう1時間あたりのストローク数GSPHに対するオーダを消化するために必要なストローク数の割合です。一方で稼働率は機械の運用時間に対する稼働時間の割合であり、1日の運用時間に対するオーダを消化するために必要な稼働時間の割合です。

トヨタ生産方式の中でのタクトタイムとサイクルタイム

タクトタイム(T/T)はトヨタの親分が下請けの子分に対して、自分が出すオーダをキチンと消化するために1個あたり何秒で加工しなさいと指導する目標値であり、例えばトヨタが下請工場に1日あたり1,000個のオーダを出す場合、下請工場の稼働時間が15時間/日(うち非稼動時間3時間)であれば、下請工場は以下のようにタクトタイム43.2秒/個を目安に加工することになります。

  • (12時間x60分x60秒)÷1,000個/日
    =43,200秒/1,000個
    =43.2秒/個

加工する際の1サイクルの標準作業時間をサイクルタイム(C/T)とすると、下請工場が40秒/個で加工してしまうと能力過剰で在庫過多となるので、稼働時間を減らしてペース配分を調整する必要があり、48秒/個で加工してしまうと能力不足で欠品になるため、シングル段取化(段取10分以内)により機械が止まっている時間を減らす努力が必要になります。

  • サイクルタイム>タクトタイムなら能力不足(欠品)
  • サイクルタイム<タクトタイムなら能力過剰(在庫)

タクトタイムがオーダ数量をこなすのに1個あたり何秒かかるかという顧客(トヨタ)重視の考え方であるのに対し、サイクルタイムは自社の生産設備の標準能力という自社(下請工場)重視の指標になり、トヨタ生産方式TPS(Toyota Production System)ではいかにムリ・ムダ・ムラをなくしてサイクルタイム(下請工場の能力)をタクトタイム(トヨタのオーダを消化するのに必要な能力)に近づけるかが重視されます。

ちなみにタクトタイムは上意下達なので明快ですが、サイクルタイムは下請工場の生産管理部が立案した来年度の予定稼働時間と目標生産数から算出されます。

  • タクトタイム=稼動可能時間÷日当たりオーダ数量
  • サイクルタイム=目標稼働時間÷目標生産数

この稼動時間が段取時間を含むかどうかは工場によると思いますが、トヨタ生産方式では下請工場に対してシングル段取化を啓蒙してサイクルタイム=タクトタイムを実現させようとしています。

そしてタクトタイムもサイクルタイムも「1個つくるのに何秒かかるか」という生産個数から必要時間を算出する考え方であり、サイクルタイムが40秒/個でオーダ1,000個を消化する場合の稼働率は以下のように計算されます。

  • 稼働率=稼働時間÷運用時間
    =(40秒x1000個)÷43,200秒
    =92.6%

ストローク数を基準としたプレス加工の負荷率

タクトタイムやサイクルタイムで時間を基準として稼働率が計算されましたが、プレス加工品の場合は何時間稼動させるかではなく、段取時間や停止時間を含めた1時間当たりのストローク数であるGSPH(Gross Stroke Per Hour)という機械能力のうち、オーダ数量を消化するためには機械を何回動かすか(何ストロークさせるか)という機械本位の考え方で負荷率を計算します。

  • 負荷率=需要÷供給能力
    =日当たりストローク数÷(1時間当たりのストローク数x稼動時間)

負荷率とは「機械の供給能力に対する需要の割合」であり、稼働率とほとんど同じ意味ではありますが、個数(何個生産できるか)とか時間(何時間動かすか)に換算することなく、需要(オーダ数量)を消化するために必要なストローク数が供給能力(何ストローク動かせるか)に収まるかどうか、収まらなければ何ストローク分の残業を稼動時間に積み上げればよいか、残業でも足りなければ土日に何ストローク分の救出を入れればよいか、というストローク数ベースの考え方です。

総合設備効率(OEE)

機械の稼働率の指標として生産管理システムから算出する指標として総合設備効率OEE(Overall Equipment Effectiveness)がありますが、これは生産効率を時間稼働率(Availability factor)、性能稼働率(Performance factor)、良品率(Yield)という3つの側面から計算される生産効率の総合的な指標です。

  • OEE=時間稼働率x性能稼働率x良品率
  1. 時間稼働率=Net稼動時間÷Gross稼働時間
    稼動予定時間のうち実際に設備が稼動している時間の割合
  2. 性能稼動時間=(サイクルタイムx出来高)÷Net稼動時間
    製造速度(本来の能力)に対する実際の製造速度の比率
  3. 良品率=良品数÷生産数
    全生産数に対する良品数の割合

要は機械がどれだけキチンと動いて(時間面)、機械本来の能力をどれだけ発揮して(速度面)、どれだけ正確に生産したか(良品率)の3つの側面から、機械の生産への貢献度を測る指標になります。