販売業と製造業の在庫管理システムの違い

システムの技術提案営業のため客先を訪問すると、お客さんは小さな予算で多くのサービスを受けようとするのが普通ですが、業者である我々は限られた予算の範囲で実現可能なベストプラクティス(ある結果を得るために最も効率の良い方法)な提案していきます。

ジャカルタ市内のお客さんは商社、物流、建設などの非製造業、工業団地のお客さんは製造業が多いですが、一口に「在庫管理」と言っても、どこまで詳細に管理するか、実績入力をいつ行なうかなどでいろんな考え方があります。

在庫管理システム上での原価管理

業務フローには数量と金額の2つの流れがありますが、数量の流れを管理するのが在庫管理システムです。

  1. 現状在庫一覧
  2. 受払履歴管理(ストックカード)
  3. 受払実績入力

の3つが主要機能になります。

販売業の場合、購入品の入出庫管理と原価(単価)の管理がセットで要求されることが多く、通常は移動平均法でリアルタイムに計算するのか、ロット管理を行い先入先出法(出庫は最初に入庫したロットから自動引き落とし)で購入原価で管理するのかのどちらかになります。

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しかし製造業の場合は、購入品である材料の原価は同じように管理できるとしても、製造工程に投入された仕掛品や製品の原価管理は簡単にはいきません。

材料単価は移動平均でリアルタイムに計算できたとしても、労務費や経費が確定するのは月末なので、月中にこれらをリアルタイムに単価に反映させるためには標準原価を使わざるを得ず、月末の実際原価との差異を売上原価に対して調整する必要があります。詳細は「標準原価と実際原価の差異」から。

実際原価計算では、材料費、労務費、経費のいずれも月末にバッチで計算します。つまり材料費は月次総平均x実績投入数量で計算し、労務費と経費は会計システムで集計された該当勘定科目のT/Bバランス金額を実績直接作業時間で工数按分します。

仕入時に発生する2方向の業務フロー

在庫ビジネスのEvaluation Cost(在庫評価)の方法としては、主に月次総平均(Monthly Average)と移動平均(Moving Avarage)がありますが、インドネシアの非製造業の場合、移動平均法でリアルタイムに最新の平均単価をアップデートして、マージンを乗せて販売価格を決定したい、というケースが多いです。但しこの場合、入荷(Receiving)の入力を必ず日付順に行なわないといけないという制約があります。

在庫ビジネスで仕入を行う場合には、システム上で在庫管理側と会計側の2つの業務フローが流れます。入荷時はPurchase(費用勘定)で処理し、仕入先からのInvoice到着日をA/P計上日とします。

会計担当者としては、入荷からInvoice到着までの期間中に、近い将来A/Pになる取引を把握したいという要望があるため、これを管理するために入荷時にA/P Accruedという未実現勘定に溜めておいて、Invoice到着時にA/Pに振替え(re-class)ます。

在庫管理側のフロー

  1. 物品の在庫数量が増える
  2. 物品の単価が更新される(移動平均の場合)

会計側のフロー

入荷時の仕訳

Dr. Purchase    Cr. A/P Accrued

請求書到着時の仕訳

Dr. A/P Accrued    Cr. A/P

間接費の処理方法

仕入品目の単価が、P/O(発注書)の品目購入金額のみで構成される場合なら問題ないですが、通常は送料、輸入申告書=PIB (Pemberitahuan Impor Barang)に含まれる関税(Bea Masuk)やPPH21、通関許可証=SPPB (Surat Persetujuan Pengeluaran Barang)などの仕入に付随するCIF(Cost, Insurance and Freight)費用が発生しています。このAdditional Costの処理方法としては主に以下の2通りがあります。

費用として計上(金額が小さい場合)

Dr. 仕入諸掛 xxx    Cr. 通関代行業者買掛 xxx
  (Expense xxx)    (A/P Accrued xxx)

販売時に売上原価として計上される(金額が大きい場合)

Dr. 仕入 xxx    Cr. フォワーダー業者買掛 xxx
  (Purchasing xxx)    (A/P Accrued xxx)

仕入勘定に計上するということは、月末の決算整理仕訳で棚卸資産全体の原価の中にフォワーダー業者からのP/O単位で一括反映させたいということであります。

よって取引発生時点の会計仕訳上で、個々の商品ごとに間接費用を配賦した上で仕入勘定に積み上げ、というような細かい処理は必要ありません。そもそも会計上の仕訳を品目ごとに分ける必要性すらありません。

システム上での間接費の品目配賦の実装方法

取引発生時点での会計仕訳上は間接費を品目に配賦する必要はないとしても、ある時点での適切な販売価格を決定するために「CIF費用をその都度反映させた上で移動平均単価をアップデートしたい」とか、「期末在庫の評価額算出のために、在庫管理システムの中でCIF費用を反映させた品目単価を自動的に計算して欲しい」などという理由で、在庫管理システムの中で取引の都度、品目の単価に間接費を配賦する必要がある場合、システム上どの画面から入力すればよいのかは悩みどころです。

この場合に問題になるのが、間接費用の金額は必ずしも発注時(P/O発行時)や入荷時(Receiving)に判明するとは限らないということです。出荷後、2週間経ってからようやくFowarderからのInvoiceが到着するケースもあるので、購買システムで物品の発注時または入荷時に、間接費を入力することは出来ないことになります。

ReceivingモジュールにAdditional Costを入力するフィールド(別タブ)を追加

ReceivingがPostingされると入力できなくなるのが難点ですが、その場合はPostingをペンディングするか、一旦Posingして事後でAdjustmentすることになります。市販のERPパッケージでよく採られる方法がこれです。

Direct Invoiceモジュールを追加し物品のP/OまたはReceivingまたはInvoice番号と紐付け

Direct InvoiceとはP/OとReceivingなしでA/Pを計上できる機能のことであり、ここに品目を特定できるいずれかのキーに紐付けるようにすれば、間接費の品目への配賦が可能になります。

サービス(非棚卸品目=uncounted item)の購入として処理し購買モジュールから入力

P/O発行後に入荷処理(Receiving)するか、もしくはP/Oなしで入荷(Purchase Direct)処理を行い、品目のP/Oと紐付ける仕組みを構築する方法です。

よって在庫管理システム上で管理できる原価は購入品のみになります。

販売業の在庫管理システム

在庫取引の会計システムへの反映方法は以下の3種類が考えられます。

会計システムのみの場合

棚卸結果を元にマニュアルで調整仕訳を作成する(三分法)。

会計と在庫管理システムが分かれている場合

月末のバッチ処理で月初在庫をInventory Aging Reportの評価額にて月末在庫に振替える調整仕訳が生成される。

会計と在庫が一体化したシステムの場合

在庫取引のたびにB/S上の資産を増減させる仕訳が生成される(継続記録法)

製造業の在庫管理システム

仕掛品のストックポイント(在庫管理する品目)が作業区単位(倉庫またはゲート)で管理できるといっても、それが入出庫(材料投入と仕掛品実績)ともにマニュアル処理なのか、後工程に入庫(仕掛品実績)すれば自動的に材料が引き落とされるバックフラッシュなのか、そのためにはBOMが必要になったり、そのBOMもどのレベルまで提供するか、などなど時間と予算によって提案の仕方が異なります。

製造業に在庫管理を導入する場合でも、購買管理システムで材料数量がアップし、販売管理システムで製品数量をダウンさせますが、放っておくと材料が増え続け製品が減り続けるので、材料のOutと製品のInの入力作業が必要になります。

さらに仕掛品の在庫管理を行なうためには、仕掛品のInと仕掛品のOutの入力作業が必要になりますが、在庫管理システムをはじめて導入する場合は、入出庫管理は材料と製品のみとし、仕掛品は月末の棚卸数量からB/Sに反映させます。

材料は工程に投入された時点で仕掛品になり、最終工程で製品になるので、製造業の在庫管理システムでは勘定科目上に材料・仕掛品・製品の3種類の棚卸資産コードが必要になります。

MRPによる所要量計算が必要であれば、仕掛品の品目コードを工程ごとに分ける必要がありますが、そうでない場合は作業区内の作業手順と考えて、1つの品目コードをロケーションでフィルタすることで対応できます。

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