インドネシアの労働法の適用範囲

本記事のポイント

インドネシアの労働者は労働法によって手厚く保護されているとはよく言われる理由は、勤続年数によって大きく膨らむ退職金や会社都合での解雇の難しさにあります。

労働法を遵守すべき主体は「 法人の形態を取る取らないに係わらず、個人、パートナーシップまたは法人が所有する事業体であり、たまたま会社法に基づく必要な書類を揃えた法人(Badan Hukum)であれば会社となり、経営機能を持ち、賃金または別の形態の報酬を支給して労働者を雇用します。

つまり会社は社員に対して、ショップオーナーはSPGに対して、按摩屋はお姉さんに対して、最低賃金を支払う義務を負いますが、現実には労働者(被雇用者)も最低賃金以下でもとにかく仕事がしたいという事情があるわけで、需給の関係から現実に労働法の規定が守られているとは限りません。

2018年インドネシアの最低賃金

2018年のUMP(Upah Minimum Provinsi 州が定める最低賃金)は8.71%アップ、2017年が8.25%だったので若干景気上向き傾向とも言えるわけですが、ジャカルタ特別州(Daerah Khusus Ibukota Jakarta)がRp 3,648,035(30,915円 1円=Rp118)なので、ジョクジャカルタ特別州(Daerah Istimewa Yogyakarta)Rp 1,454,154(12,323円)の2.5倍、それはみんな出稼ぎに来たいと思いますわ。

ところでこの最低賃金引き上げで民間企業の正社員(karyawan tetap)の給料が上がりそうなのは理解できますが、契約社員(karyawan kontrak)や日雇い社員(karyawan harian)、カフェの店員さんとか、ブティックのSPG(Sales Promotion Girl)、按摩屋のお姉さんとかはどの程度恩恵を受けられるのでしょうかね?

これは労働法(UU No 13 Tahun 2003)91条に定義されている「経営者と労働者または労働組合との間の合意により定められる賃金に関する規則は、現行の法律規則に定められている賃金規定(89条 州または県/市地域の最低賃金)を下回ってはならない。」という条文の適用範囲が誰なのか、どの程度の強制力があるのか、という素朴な疑問です。

労働法の適用範囲

労働法を遵守すべき主体は「 法人の形態を取る取らないに係わらず、個人、パートナーシップまたは法人が所有する事業体であり、私企業・公営企業の別なく、賃金または別の形態の報酬を支給して労働者を雇用するあらゆる事業体(一般規定)」側にいる雇用主(Employer=Pemberi Kerja)であり、「個人、経営者、法人または他の形態の者で、賃金または他の形態の報酬を支払って、労働力を雇用する者」を指します。

そしてその事業体がたまたま会社法に基づく必要な書類を揃えた法人(Badan Hukum)であれば会社(Company=Perusahaan)となり、経営機能を持ち、賃金または別の形態の報酬を支給して労働者を雇用します。

一方で労働者(Pekerja/buruh=Worker/labor)とは、「賃金または他の形態の報酬を受け取り仕事をするすべての者」を指すわけですから、会社は社員に対して、ショップオーナーはSPGに対して、按摩屋はお姉さんに対して、最低賃金を支払う義務を負います。

ただし労働法の90条に「最低賃金を支払うことのできない経営者には、猶予を行なうことができる」と定義されているとおり、現実には来年以降ジャカルタのすべての事業体の雇用者が最低賃金であるRp 3,648,035を払えるわけでなく、労働者(被雇用者)も最低賃金以下でもとにかく仕事がしたい、という事情があるわけで、需給の関係から現実に労働法の規定が守られているとは限らないわけで罰則もありません。

まあ日本もブラック企業とブラックバイトで残業代なしとか普通にあるのと同じで、雇用主側から最低賃金以下でこき使われたあげく、不満を言ったら「嫌ならやめろ」の一言でクビを切られると、前職を辞めて今の仕事に就くのにかかった時間とコスト分、次の仕事を探すための時間とコスト分の損失を被るため、労働者側は労働組合を作り、労使紛争(ストライキ)を起こすことで対抗します。

就業規則と労働協約

事業主が労働者を雇用する際の条件となるものが就業規則(PP=Peraturan Perusahaan)であり、「10人以上の労働者を雇用する経営者はいずれも、就業規則を作成する義務を負い、その規則は大臣または指名された政府高官の承認(Pengesahan Menteri Ketenagakerjaan)を受けた後に発効」されますの、事業体の経営者はジャカルタに7箇所ある最寄の労働移住省(Dinas Tenaga Kerja dan Transmigrasi)、通称DISNAKERに提出する必要があります。

労働法111条に就業規則に記載する内容として以下が定義されています。

  1. 雇用主の権利と義務
  2. 労働者の権利と義務
  3. 労働条件
  4. 服務規律
  5. 就業規則の有効期限(最高2年間)

事業主はこれに従って就業規則を作成し、Disnakerに提出し承認を得る必要がありますが、経営者と労働組合との間で別途労働協約(PKB=Perjanjian Kerja Bersama)がある場合には就業規則は必要ありません。

解雇(PHK=Pemutusan Hubungan Kerja)された労働者が、不当解雇だとして雇用者をDISNAKERに訴え出た際の争点となるのが、この就業規則や労働協約の解釈の仕方の相違になります。