建設仮勘定とプロジェクト損益管理

本記事のポイント

工事の完成・建物の引渡等までに仮払い、前払いした工事費や材料費、労務費、経費などは、建設仮勘定(Construction in progress)に計上します。

また日本から輸入する設備のうち、FOBの本船渡し契約では出港した時点で自社の資産となりますが、送料(Freight charge)、PIB(輸入申告書Pemberitahuan Impor Barang)、SPPB(通関許可書Surat Persetujuan Pengeluaran Barang)などのCIF費用(Cost, Insurance and Freight)が確定するまで固定資産に組み入れず、建設仮勘定に一時計上します。

販売する商品としての建物の建設途中のものは未成工事支出金(Cost of uncompleted contracts)や仕掛品として区別されます。

建設仮勘定と仕掛品勘定

建設仮勘定(Construction in progress)は有形固定資産の建設・製作のために、工事の完成・建物の引渡等までに仮払い、もしくは前払いした工事費や材料費、労務費、経費を管理するための一時的な勘定科目です。

または工場の設備を日本から輸入する際に、FOBの本船渡し契約の場合は出港した時点で自社の資産となりますが、Freight chargeやPIB(輸入申告書)に含まれる関税(Bea Masuk)やPPH21などのCIF費用が事後にかかってくるため、金額確定前段階では固定資産に組み入れず、建設仮勘定に一時計上します。

もっとも建設仮勘定は「自社で使う予定の固定資産」に限定し、「販売する商品」としての固定資産の建設途中のものは未成工事支出金(Cost of uncompleted contracts)というのが正確らしいですが、インドネシアでこれが分かれているケースはあまりないと思います。

そして将来販売する棚卸資産であれば仕掛品勘定(Work In Process)に計上します。

Dr. 建設仮勘定      Cr.当座預金
Dr. 有形固定資産    Cr. 建設仮勘定

在庫移動と在庫振替

非製造業向けERPパッケージでは在庫移動処理はあっても在庫振替処理はない場合が多く、これが非製造業向けERPパッケージを製造業に適用する場合の制約となります。

製造業の場合、購入品はいろんなプロセスを経て形を変え製品として出荷まで至りますが、サブコン(外注)への在庫移動に伴い材料が仕掛品に変わるという要件を、会計モジュールとリンクした非製造業向けERPパッケージで満たそうとする場合、以下のような制約が出てきます。

  1. 在庫移動でプロジェクトコードを付番してコスト管理することができない(費用が発生しないから)。
  2. 在庫移動で在庫管理上品目コードを変えることはできない(場所の移動のみだから)。

R/M(材料)のサブコンへの移動時にプロジェクトコードを付番しプロジェクトごとにWIP(仕掛品)として管理したいという要件は、在庫移動時に自動仕訳を発生させG/L上でプロジェクトごとに管理するということです。

ところが在庫移動ではシステム上費用は発生しないことが前提なので、プロジェクトコードを付番してWIP勘定(Invoice発行時にCOGSに振り返る資産勘定)に費用として積み上げることができません。

サブコンへの物の移動時にプロジェクトコードを付番し、会計上G/Lでプロジェクトごとにコストを管理し、品目コードを変えるには、在庫振替により受けと払いの実績をセットで発生させる必要があります。但し払いと受けの2ステップの処理になるため、以下の2つの仕訳で振替を行うことになります。

Dr. Temporary    Cr. R/M
Dr. WIP       Cr. Temporary

仮に購入品を入荷するときに既にプロジェクトコードが決まっていれば、入荷時にプロジェクトごとにR/Mに計上させることが可能であり、G/L上でプロジェクトコードを持たせることにより、プロジェクト単位のコスト管理が可能です。

R/Mとして入荷した時点でプロジェクコードの紐を持っていますので、後は在庫管理上どのタイミングでWIP化させるかという問題になります。

ただ現実的には材料購入時にプロジェクトコードや製品グループ等の社内用途が確定できるケースが少なく、製番管理ならともかく一般的には受払いの過程で用途が確定するのが普通です。

費用・収益発生のタイミング

業務システムにおいて費用(収益)が発生するタイミングは以下の4つになります。

  1. Invoice発行時(Assetプラス、Salesプラス)
  2. R/M Usage時(COGSプラス、Assetマイナス)
  3. Invoice受領時(のちにCOGS化するExpenseプラス、A/Pプラス)
  4. その他Expense計上時(Expenseプラス、A/Pプラス)

このCost(Revenue)化するタイミングでプロジェクトコードを付番できるということになります。

在庫移動でプロジェクトコードが付番できない(Cost化できない)となりますと、出荷時まで直接材料費に関してはプロジェクト単位のコスト管理ができないことになります。

サブコンで製造加工中に管理できるのは、期間中に発生するOverheadやLabor Costのみであり、出荷時にはじめて直接材料費も含めた全体のCost管理表が完成することになります。

サブコン側で別途発生する材料費等は、サブコンからのInvoice到着時にプロジェクトコードを付番でき、COGSに振替えることができます。

Dr. Expense work 100    Cr. A/P 100
Dr. COGS 100    Cr. Expense work 100

(出荷時)

Dr. Shipping Clearing 100    Cr. Inv. Item 100

(Invoice発行時)

Dr. A/R 100    Cr. Sales 100
Dr. COGS 80    Cr. Shipping Clearing 80

相対勘定による相殺処理

Transportationやその他Expenseもプロジェクトコードを付番されWIPに積み上げられ、Sales計上時にWIPの累積がCOGS化します。

Dr. Biaya transportasi 100    Cr. Petty Cash 100

上記のように取引時点ではExpenseプラスAssetマイナスの仕訳が発生しますが、このExpenseはWIPとして将来COGSに反映されるべきものです。言い換えるとExpenseの発生と同時にWIP Assetの評価額が上がることを意味します。

Dr. WIP 100    Cr. Transportasi Payable 100

上記のようにContra account=相対(あいたい)勘定は特定の勘定をオフセット(相殺)するものであり、Biaya transportasi(費用)をTemporary account(P/L科目)を用いてWIP(資産)に振替えていますが、T/BにはBiaya transportasiの残高が残っているためそのままP/Lに掲載できます。Temporary accountというContra accountがないとT/BからP/Lの明細が作れません。

contra

Contra accountの代表例が貸倒引当金( Allowance for Doubtful)と減価償却累計額(Accumulated Depreciation)です。これらマイナス資産勘定で間接的に資産を減らすことによって、インボイス発生額に合ったAR金額を管理し固定資産の取得額を維持しながら、B/S上では差引き後のNetの金額を把握できます。

Dr. 貸倒引当金繰入額(プラス費用)    Cr. 貸倒引当金(マイナス資産)
Dr. 備品減価償却費(プラス費用)      Cr. 備品減価償却累計額(マイナス資産)

ExpenseのProjectへの配賦方法

Direct Material Costは出庫のたびにプロジェクトコードをキーにG/L上で自動的に管理されますが、Labor Cost, Overhead Cost等は金額が判明した時点(月末など)にProjectにコストを振り分けます。

Labor CostはStaff tableに設定してある時間単価x作業時間でProjectに対するコストを計上します。ただし時間単価は標準単価として1つしか設定できないので、休日出勤や残業時の単価の増加には、コスト計上時に手修正して反映させます。

Dr. Salaries 200,000    Cr. Bank 200,000
Dr. WIP 200,000    Cr. Payrol payable (contra a/c) 200,000

Salariesも同じくWIPに振り分けるためのcontra accountが必要になります。

月中に製品原価を確定するために労務費と経費を標準原価で計算する場合、月末に実際原価との差額を修正する仕訳が必要になります。詳しくは2. 標準原価と実際原価の差異から。

工事案件のキャッシュフローへの影響

インドネシアの工場では、製品の出荷後お客さんで検品完了報告を受けインボイスの発行が可能になるのは1週間後くらいになるのが普通です。しかし長期の工事案件の場合、進行基準で分割請求が可能である場合でも、出荷(サービス提供)からインボイス発行までの間隔が数ヶ月空いてしまうことがあります。

これは受注登録は完了しているが売上が立たないので受注残が溜まっている状態になります。売上(収益)にならないのでP/L上の利益が上がらない、後1ヵ月後にはインボイス発行できるのに・・・と思いながら真っ赤っかのP/Lを恨めしく眺めざるを得ないことになりかねません。

利益があろうとなかろうと固定費はほぼ毎月決まった額かかってくる、でも固定費支払いのために融資を受けることは極力避けたいので、経営者は営業に対してインボイスの発行をなるべく早めるようハッパをかける。そして営業は顧客から分割請求の許可をなんとか取り付けてホッと一息つく。

A/R Aging ReportとA/P Aging Reportが経営者にとって重要なのは、未来のキャッシュフローの予定が立つからです。ところが受注残にたくさん溜まっていると正確なキャッシュフローの動きが把握できなくなるので、受注登録の段階でインボイス発行スケジュールを入力させる仕組みが必要になるケースがあります。