ケイマン諸島という名前から思い出したインドネシアの移転価格の問題

僕が新卒で入社したのは旧長期信用銀行系のシステム会社でして、最初に配属されたのがAS/400上でRPGとCLベースで海外支店用システムを開発・運用する部門でした。

当時の海外支店一覧の中でロンドンとかニューヨークとか有名都市に混じってひときわ異色を放っていたのがケイマン支店であり、最初はナニコレという感じでした。

タックスヘイブンと移転価格

当時の先輩からは、ケイマン諸島というのは税金が優遇された特別区なので、日系の銀行はほとんど全部がケイマン諸島に支店を置いて節税している、と教えてもらいましたが、その後インドネシアに転職してしまい、その名前もすっかり忘れていたところに、2013年のオリンパスの損失隠し事件で、ケイマン諸島の会社買収がなんかおかしい、みたいな感じで突然懐かしい名前として自分の前に登場しました。

不動産や金融資産で大損こいたら、その含み損は時価会計の原則で損失処理を行なうべきですが、僕がちょうどインドネシアに来た1997年に発生した山一證券の破綻の場合は、含み損のある不動産を簿価で連結対象外の関連会社に売却し、関連会社の損失に計上させるという典型的な飛ばしになります。

ただオリンパス事件は2013年最近の話であり、こんなベタな飛ばしは通用する時代じゃなくなっていましたので、実質無価値なペーパーカンパニーを多額の金額でM&Aして、損失穴埋めの裏金捻出と同時に財テクの損失をM&Aの損失に付け替えという方法だったようです。

ケイマン諸島には、島内で事業を行わない会社は法人税を払わなくて良いという法律があり、がめつい海外企業からのブラック租税回避マネーを呼び込んで、会社設立、運営、送金手数料などなどで財政をまかなおうという、人口の少ない国だからなせる技を取っています。

こういうのをまさにランチェスター戦略と言うんでしょうけど、実際島の住民約5万人はほぼ無税で社会保障も充実している中で幸せに暮らしているそうです。

ですので僕の前職の親会社である銀行のように、世界中の大企業がペーパーカンパニーを設立して、ケイマン支店をいろんな形で節税対策として利用しているようですが、株主の利益最大化という企業の目的には合致しているとはいえ、一般庶民の感覚からすれば自国に納税せずに庶民の税金でまかなわれる公共サービスにタダ乗りしているんじゃないの、と外野席からヤジの一つでも飛ばしてやりたいところです。

関係ないですが、僕がインドネシアに転職する数ヶ月前に、この銀行の系列会社である不動産リース会社でバブル崩壊による巨額不動産損失が発覚し、銀行から子会社出向してきていた当時のダンディな部長さんが、実はこの事件に深く関与していたということで、ニュースステーションに緊急出演するなど、随分会社内外でゴタゴタしていた時期でした、なつかしい。。

結局はこの事件が引き金になって銀行自体が消滅することになりました・・・。

話がズレそうですが、日本で移転価格税制が導入されたのが1986年とのことで、僕が働いていたのが1995年前後ですから、日本で発行した長期金融債の運用益を、海外支店とは言え別事業会社であるケイマン支店に、コンサルタント料とか販売手数料とかいう名目で費用計上し安易に送金したら、間違いなく移転価格と見なされていたはずです。

勘定科目としてのロイヤルティと配当

会計システム導入時になにはともあれ勘定科目を準備していただく必要があるのですが、日本本社がインドネシア拠点から投資回収するための科目としてロイヤルティ(Royalty)と配当(dividend)があります。

ロイヤルティは製造費用科目の場合はProduction Royalty、販管費科目の場合はコミッション(Sales Commission)、配当は未払配当金(dividend payable)として負債科目にクラス分けされることが多いようです。

このロイヤルティはインドネシア現地法人と日本本社間の関所みたいな科目であり、そこにはインドネシアの税務署という門番が二重三重にガードを固めており、最悪通行拒否(価格移転と判断され否認)されますし、うまく抜けられた(日本本社に対する正当なロイヤルティとして認められた)としても、移転価格税制に基づきロイヤルティ金額を再計算された上で、PPH26という通行税(海外サービスに対する源泉税)20%を支払う必要があります。

ただ日本とインドネシアは租税協定がありますので、海外支店間取引につき日本側で一定額納税しますからインドネシア側でも軽減税率を適用してください、と申告することができますし、インドネシア側で源泉徴収票(Bukti potong PPH26)を発行してもらい、日本の税務署に提出することで、インドネシアで一定額は源泉済みという証明をすることで二重課税は避けられるようです。

本来配当という形での投資回収が望ましいのでしょうが、数年間連続して営業利益が出ていない限り配当に計上するのは難しいようです。

移転価格と利益操作

先日、日本で開発されたパッケージソフトウェアをマレーシアの海外拠点から購入する際に「値引き販売は日本で価格移転と見なされかねないのでインドネシアだからと言って優遇は出来ません」と言われてしまったのですが、価格移転とか利益操作という意図ではなく、好意で行なった値引き販売が、当局によって疑われてしまうというのは、なんとも切ないところです。。。

インドネシアでも「お友達価格」というのは非常に危険であり、「お得意さんだから今回は利益なしで提供します」というのは税務署から利益操作取引と見なされかねず、結局お互いの利益にならないため、やらないように気をつけています。

こんな投稿も読まれています