インドネシアの日系製造業における棚卸の問題

インドネシアの工場では毎月末棚卸するところが多いですが、工場によっては毎月末の棚卸は場所限定の軽いやつで、上半期下半期に全部の場所についてきっちりと棚卸するところもあります。

工場経営にとって正確な在庫管理は最重要課題の一つですが、残念ながら現場のスタッフは棚卸の重要性をあまり理解していません。実棚数量が違うと次の棚卸までの期間、在庫数量が狂ったままであり、材料在庫が狂うと発注数量に影響し、製品在庫が狂うと出荷計画に影響します。

「気づいた時点で在庫調整すれば良いし」「次の棚卸で正確にカウントすれば良いし」という発想は、棚卸を数量面からしか見ていないことに起因し、実棚数量が月末在庫評価額に影響し、財務諸表を大きく狂わせるという金額面の影響についてきちんと啓蒙する必要があると思います。やはり数量より金額のほうがインパクトは強いですw。

例えば前月の棚卸しがテキトーで架空の在庫が一杯計上されていたとして、今月突然本気出してビシッと正しくやってしまうと、今月の売上原価(期首+当月購入-期末)が跳ね上がりP/Lが真っ赤になり社長があせります。まあその逆もあるので通年では結果オーライになるわけですが。

実棚カウントと実績入力の注意

出荷エリアの製品を実棚に含めるかどうか。

出荷入力処理が終わっていない出荷エリアの製品を、棚卸時に製品在庫に含めてカウントするのは正しいですが、製品在庫に含めずに出荷処理が行われるとマイナスになります。出荷入力処理が終わっている出荷エリアの製品(出荷直前)を、棚卸し時に製品在庫に含めてカウントするとオーバーします。

工程の機械にある在庫を前工程在庫としてカウント。

基本棚卸前には機械の中にある工程在庫はすべて作業を完了して実績として上げてしまいますが、それができない場合実績入力処理が終わっていない工程内在庫を、棚卸し時にシステム上の前工程の仕掛在庫に含めてカウントするのは正しいですが、システム上の自工程在庫に含めて棚卸しで仕掛在庫としてカウントすると、実績入力時にオーバーになります。要は棚卸し後に実績が上がるものは前工程在庫としてカウントすべきということです。

棚卸開始時から締め処理までの期間にPosting(Approve)はしない標準業務手順(SOP)の徹底。

システムはアジャストメント処理により「受け」または「払い」の処理で数量をプラスかマイナスするのみですが、棚卸後のPosting処理では一旦システム数量をゼロにリセットした上で棚卸数量をプラスします。

棚卸数量の確定に日数かかる場合は、期間中の在庫数量に影響を及ぼす取引のPosting(Approve)または数量アジャストメント処理はできません。日々の取引入力はしてもOKですが、ステータスは登録済み(Registered)の未承認のままにしておきます。

在庫管理システムでマイナス在庫を許容しない場合は、取引入力前にアジャストメント処理が必要になるが、棚卸が未了の段階で在庫取引の入力により数量が変動すると、事後に棚卸数量が確定した段階で取引入力数量分をアジャストメントし再調整が必要になる。よって棚卸処理のPostingを先に行い、前月末の数量を確定(締め処理完了)してから、当月初から溜まっているステータスがRegisteredの在庫取引をPosting(Approve)する。

前月の在庫調整をする場合の単価に注意。

在庫受払と会計が連動するPerpetual method(継続記録法)を採用するシステムでは、購入品は移動平均法で単価を更新し、仕掛品と製品はBOMにセットした1個あたりの標準労務費と標準経費を積み上げた結果を単価マスタにて更新します。つまり受払の都度、単価が更新されます。

「システムがマイナス在庫を許容しない」とは「入力日(System date)の在庫数量のマイナスを許容しない」ということであり、締め処理を行わない限りシステムは入力時の現在の在庫を見て、数量が十分であれば過去の取引日(Transaction date)の在庫調整が出来てしまいます。

例えば前月のシステム在庫が10個存在し、実棚の結果在庫が0個だった場合に、単価によってはマイナス10個の在庫調整をしても金額だけ残る可能性があります。

上記3と同様に、実棚の反映が完了し締め処理が行われるまでの月初数日間のモラトリアム期間に、前月の在庫調整は行わないようにする、というSOPが必要になります。

システムの棚卸機能

ロット単位の棚卸では現品にロット番号が記載された現品票が付いていることが必須であり、現品票には、「ロット番号+品目コード+荷姿番号+入数」のような形のバーコードが記載されています。詳細は「ロット管理とバーコード」から。

  1. 棚卸し数量を入力してApproveすると在庫数量を一旦リセットし更新する機能。
  2. 実棚情報(品目、場所、数量、ロット番号など)から在庫数量を変化させずに新規に現品票のみを発行する機能(迷子ロットに貼り付けるため)。

マニュアルロット管理の棚卸

ロット単位に品目コード、ラインコード、数量、場所が記載された棚卸伝票の正(2枚綴りのうちの1枚)を置き、副を回収し、棚卸完了後に現在庫リストを作成します。サブコン在庫はD/Oを元に作成した在庫チェックリストをメールで送信し、棚卸数量を記載済みのリストを返信してもらいます。

マニュアルロット管理からシステムロット管理への移行時の棚卸

マニュアル処理で付番されているロット番号と新しくロット管理システムで生成されたロット番号はネーミングルールが異なるため、棚卸を機会にすべての現品に対して新しいロットを付番する必要があります。棚卸伝票の情報(品目コード、ラインコード、数量、場所など)を元に新ロット番号を付番した現品票を発行し現品に貼り付けます。

システムロット管理が運用されてからの棚卸

1ロットが複数の荷姿に分かれるのが普通なので、棚卸伝票1(ロット)に対して現品票N(荷姿)が対応することに注意が必要です。

システムから正副2枚の棚卸伝票(棚札)を発行し、正を現品に貼り付け副を回収します。このとき棚札に記載されているシステム数量と現品の数量が異なる場合は棚札の正副の数量を手修正しシステムに棚卸数量を入力します。システム数量と現品の数量が一致する場合はなにもせずシステム数量がそのまま引き継がれます。

  1. 現品あり現品票あり棚札ありで数量違い:棚札の正副を手修正、システムに棚卸し数量を入力。
  2. 現品あり現品票なし棚札あり:棚卸システムから新規の現品票を発行
  3. 現品あり現品票あり棚札なし:棚卸システムから新規の棚札と現品票を発行
  4. 現品なし現品票なし棚札あり:システムより現品の場所をトレース後、新規の棚札と現品票を発行

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