1個あたり何分かかるかが工数、1時間あたりいくらかかるかが賃率

現在ルピア下落に相関する国内消費の冷え込みから景気が下降気味ですが、中国やタイに比べてインドネシアの日系企業のシステム化は大きく遅れているため、国内IT市場の潜在的な拡大可能な「のりしろ」の大きさという点でインドネシアは非常に魅力的な市場であり、今後も日系Sier等の進出が続くと思います。

一般的にシステム化は、まずは確実に業務効率が上がる会計システムで導入実績を作り、次に工場経営に最も必要な情報とはいえ規模によってはExcelベースで十分対応可能かもしれない在庫管理システムで最低でも材料と製品の管理ができるようになり、その次に仕掛品を含めたモノとデータのフローとストックを一元管理しようと一念発起して生産管理システムを導入するという順番になるでしょう。

購買・販売・生産等の受払さえキチンと取得できるようになれば、現在行っているコストセンター単位もしくは製品グループ単位の製造原価集計の効率化と製品単位の製造原価把握のために原価管理システムの導入を検討することになると思います。

一般的には規模の大きい工場ほどシステム化の必要性は高いでしょう。

実績工数と標準工数

原価管理システムで製品別の直接労務費を計算するには、会計システムから集計したコストセンター別または製品グループ別のセミグロスの直接労務費を、直接作業時間を配賦比率として按分するのが妥当だと思われますが、製品別直接作業時間をどのように取得するかという問題があります。製品ごとの手間隙が異なる点を無視して、製造実績数量按分というのはさすがにないと思います。

作業日報に直接作業時間が製品別に正確に記入されていれば月末にこれを集計するだけでよいですが、直接作業の間には間接作業や現場離脱等が挟まりますので、正確に品目別の直接作業の実際発生時間だけを日報ベースで取得するのは、ちょっとハードルが高いかもしれません。現場端末またはタッチパネルで簡単にStart-Endが入れられるシステムがあれば可能かもしれませんが。

インドネシアの日系製造業でこの直接作業時間集計までシステム化されているというのは相当IT化の進んだ工場だけだと思いますが、直接作業時間の集計方法としては主に以下の2通りがあると思います。要は前から計算するか後ろから計算するかの違いです。

現場端末から直接作業開始時間と終了時間を入力し合計

製品別の製造開始時間と製造終了時間を記録しますので、月末に集計するだけで品目別の直接作業時間が日報ベースで取得できます。

出退勤データから間接作業時間と非稼動時間を控除

コストセンターに集計された直接作業時間を製品別に按分するための基準としては、上述の「製品ごとの手間隙」と製造実績数量を考慮する必要があります。この製品ごとの手間隙の指標が標準工数(1個あたり標準で何分かかるか)です。

標準工数x製造実績数量

製品別製造原価を計算するにはシステムを使う場合でもExcelでマニュアル計算する場合でも、事前に製品別の直接作業時間の計算が必須になります。

製品別直接作業時間=全体の直接作業時間x{(標準工数x製造実績数量)/SUM(標準工数x製造実績数量)}

算出された製品別直接作業時間に賃率(1時間当たりのコスト)を掛けることで製品別の直接労務費が計算されますが、この賃率はコストセンター別または製品グループ別に以下のように計算されます。

全体の賃金 ÷ 直接作業時間合計=直接労務費賃率

ここまできてようやく製品別原価要素である直接労務費が計算されます。

製品別直接作業時間x賃率=製品別直接労務費

製品1個あたりの直接労務費は製品別直接作業時間を製造数量で割った実績工数(1個あたり実際に何分かかったか)に賃率を掛けることで求められます。工数は通常分単位、賃率は時間単位ですので単位はあわせる必要があります。

実績工数x賃率=1個あたりの直接労務費

実際賃率と標準賃率

salaryが月給で固定費であり、wagesは残業代など労働時間に対する賃金で変動費になります。恥ずかしながら、この違い最近になって初めて知りました。

賃率はバイトの時給みたいなものであり、時給が面接時に契約として固定され、ワンオペで休む間もなく消耗しようとトイレ掃除中に便座に座って一服しようと一定であるのと同じように、賃率も標準(予定)を使うのが一般的です。

原価管理システムを使う場合の賃率は計算結果として事後に得られる実際賃率であり、Excelでマニュアル計算する場合の賃率は直接労務費計算のために事前に準備する標準賃率になります。

ワンオペで忙しかろうとトイレでサボろうとバイト代の実際受け取り額は同じですが、雇用主にとっては賃率はバイトがサボればサボるほど上昇します。よってバイト代も標準で固定するのではなく、年に1回の査定で実績に応じてアップデートしていかないと、不公平感が蔓延し現場の士気が下がります。

こんな投稿も読まれています