「空気を読む」文化がインドネシア語を変化させる

日曜朝のThamrin-Sudirman通りはカーフリーデー、Bundaran HI(ホテルインドネシア前広場)までは徒歩圏なので、一度Tシャツ短パン姿の健康的な人々に混じってウォーキングに参加してみようと自宅アパートを出たのですが、運動不足のために予想以上に足が退化しており、Grand IndonesiaのDjournal Coffeeに避難しました。

インドネシア語の構造的利点

僕がインドネシア語の歌で唯一暗唱できるのが独立の歌Hari merdekaでして、「トゥジューブラス アグストゥス タフン ウンパット リィマァー」という強烈なフレーズから始まるこの曲を耳にしたことがない人はいないと思いますが、1945年8月17日のインドネシア独立後に、共通語として多数派のジャワ語ではなく少数派のムラユ語を選択した理由の一つが、その言語構造の柔軟性にあります。

インドネシア語については「世界で一番簡単な言語」とか「主語述語入れ替えても通じる」とか「単語数を増やせばなんとかコミュニケーションが成立する」とかよく言われますが、目論見どおり71年を経た現在でもインドネシア語はアメーバーのように変化し、バリエーションと深みを増し続けています。

日本語でも20年前はネガティブな意味しか持たなかった「やばい」という言葉が、今ではポジティブな意味でも使えるようになっているように、言語の変化というのは最初は主に若者の間でのBahasa Gaul(おしゃべり言葉)が、年月が経つにつれて市民権を獲得していくパターンが多いと思います。

  1. 映画やアニメから外来語を吸収
  2. 発音しやすい綴りに変化
  3. 頭文字をだけ取ったり、語幹同士をくっつけたりして短縮

「空気を読む」国の言語は変化しやすい

間違いなく何かのアニメの影響だとは思いますが、最近耳にする外来語の一つに日本語のGANBATTE(頑張って)がありまして、インドネシア語で

インドネシア人
Semangat(頑張れ!)

というと押し付けがましくなるシチュエーションでも

インドネシア人
ガンバッテ

と言えば、インドネシア語にはない日本語的なイントネーションのおかげで耳に心地よく響くみたいです。

反対に頑張り過ぎないように「落ち着いてね」「気を楽にね」という意味で最近よく見るのがWoles kelesで、ここまでくると原型をイメージするのはほとんど困難です。

  1. 原型は英語のslow「ゆっくり」
  2. これがselowになるとプラスアルファで「santai(落ち着いて)」というニュアンスが加味される。
    インドネシア語のLINEのスタンプでよく使われている。
  3. これを逆さまに書いたらWoles。
  4. 推量の助詞のkali「~わかる?」がkelesに変形してWoles keles「いいかい、落ち着いて」みたいになる。

3の逆さまになるところは、日本語だと「ジャーマネ(マネージャー)」とか「ワイハ(ハワイ)」みたいなギョーカイ用語に近いかもしれませんが、これらのインドネシア語の変化の仕方に共通して言えるのは「ニュアンスを和らげる」という中和作用であり、これは場の雰囲気を壊さないこと、日本以上に「空気を読む」ことが求められるインドネシアの民族的・宗教的特長に起因するものと考えています。

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